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世界で3番目に食品廃棄によるCO2発生量が多い日本。食品ロス問題に解決の道はあるのか

エコトピア

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世界では食料難が続き、貧困に苦しむ国が数多く存在します。 しかし、日本ではスーパーやコンビニなどで、手軽に食品が手に入るどころか、食べられるはずの食品が、大量に廃棄されています。

そのような、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品を「食品ロス」と言い、問題視されています。 そんな食品ロスの削減に取り組む、日本サステイナブル・レストラン協会に所属する、冨塚由希乃さんから問題の原因や改善についてお伺いしました。

食品ロスは世界的な問題!環境問題にも関係

――日本サステイナブル・レストラン協会で活躍する冨塚さんですが、食品ロスを始めとする環境問題に関心を持ったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

きっかけは、母からの影響が大きいと思います。私の母は水回りに関係する仕事に携わっていて、その会社がCSRの一環で子ども向けに環境教育のワークショップを行っていました。私は小学生のころから、そのワークショップに参加していたので、山の植林活動や川掃除など、環境問題に触れていました。

同じころ、ユニセフに関する動画を見て、世界中に食べられない人々が存在することを知りました。当時は、食品ロスというテーマは広く知られているものではなく、ニュースで流れる機会もありませんでしたが、これは解決すべき問題だと潜在的に感じました。

食品ロスについて強く関心を持ったのは、大学生のとき高級ホテルのレストランでアルバイトをしていたときのことです。 そのホテルでのビュッフェでは、いつも大皿にある料理が1/3程無くなると順々に新しい大皿を出して、捨てていきました。それが高級食材だったとしても、捨てられてしまうのです。 それが毎日のように繰り返される現場を目にし、私は大きな違和感を覚えました。

食品ロスは、食品が大量に廃棄されて無駄が出てしまうだけでなく、環境問題にもつながります。 廃棄された食品を焼却処理することで二酸化炭素が排出され、地球温暖化の要因となる温室効果を助長してしまうからです。 日本の食品廃棄物焼却処理によるCO2発生量は、中国、アメリカに次いで3番目に多いと言われています。 日本のコンビニやスーパーは、大変便利ではありますが、食品ロスを増加させる原因でもあります。 だからと言って、コンビニやスーパーの仕組みを変えることは難しく、その他にも多くの要因が絡むことから、簡単には解決できないのが、この食品ロスの問題です。

学生時代に見たビジネスによる食品ロス対策

――冨塚さんは、学生時代から多くの活動を行い、企業による食品ロスの取り組みも、インターンによって触れてきたと聞いています。

大学1年生のころ、環境ビジネス学生団体「em factory」に参加したことが、私自身に大きな影響を与えました。 em factoryは、学生とコンサルタント、企業の三者によって、学生向けの環境ビジネスコンテストを開催する団体です。 それまで私は、環境問題に対する活動と言えば、ボランティアのようなイメージを抱いていましたが、em factoryの活動を通して、環境問題はビジネスによって解決できると感じ始めました。 それをさらに体感できたのが、インターンによる企業の活動でした。

インターンはいくつかの企業に参加させていただきました。 1つはコンビニによる食品ロス削減の取り組みや、アプリを制作している会社です。 もう1つは、食品ロス削減を掲げる、株式会社クラダシ。こちらでは、地方創生と食品ロスをかけ合わせた学生による活動を支援する取り組みに携わらせていただきました。

あとは、食品ロスジャーナリストとして有名な井出留美さんが代表取締役を務める、株式会社office3.11でコンビニから廃棄される、恵方巻やクリスマスケーキに関する調査を手伝わせていただきました。 その際、井出留美さんの影響力の大きさを感じました。当時は食品ロスという言葉は今ほど認識されていませんでしたが、これほどたくさんの人に知られるようになったのは、井出留美さんによる功績が大きいと思っています。

食品ロスを削減!日本サステイナブル・レストラン協会とは

――冨塚さんが現在所属する、日本サステイナブル・レストラン協会とは、どのような団体なのでしょうか。

サスティナブル・レストラン協会は2010年にイギリスで設立された団体で、日本では2018年に発足されました。 活動内容を一言で表すと、日本のレストランにサスティナブルな取り組みを促進する団体です。

サスティナブルと言っても幅広く、何をどこまで取り組むべきか判断が難しいことです。 そこで協会では、会員になっていただいたレストランを調査し、どれだけサスティナブルな取り組みができているのか、星の数で評価します。 調査はいくつもの指標を項目に分けて行い、食品廃棄の量だけでなく、アニマルウェルフェア、持続可能な漁業による調達、雇用やコミュニティへの配慮、水資源の消費や二酸化炭素の排出量など、細かい取り組みも対象になります。 協会に認定されたレストランは、格付けのステッカーが発行され、それを入り口や看板の横に掲示してもらいます。

現在は、レストランがサスティナブルな取り組みを行っているかどうか、ということを気にしている方は少ないと思います。 しかし、これからはサスティナブルな取り組みを行わなければ、持続的なレストランの経営は難しくなる、という危機感を持たなければなりません。 さらに、最近では大企業がCSRに注力する時代でもあるので、個人レストランがこのような取り組みを行えば、ブランディングにもなるため、今後は注目度が高くなる可能性や、環境意識の高い世代を取り込むという意味では、日本サステイナブル・レストラン協会の会員になるメリットは大きいと考えられます。

 
  メニュー表  
    
広島にある、加盟店のRestaurant be。これからお店のサステイナビリティを加速するにあたり、他の店舗の取り組みや思い、課題などをシェアし切磋琢磨し合う為にも加盟してくれている。     

他にも日本サステイナブル・レストラン協会は、レストランに向けた勉強会やイベントも開催しています。 レストランによって、同じテーマに対するアプローチであっても、取り組み方やアイデアは本当に様々です。 イベントや勉強会を通じて、他のレストランの取り組みを把握できるので、会員同士が切磋琢磨できるような場として協会が機能することも目標です。

似たような取り組みでミシュランの「グリーンスター」がありますが、こちらでピックアップされるレストランは、既に強い発信力を持っているお店ばかりです。 しかし、自身の取り組みを積極的に発信しないレストランやシェフも少なくありません。 そういったお店を日本サステイナブル・レストラン協会が発掘して、スポットライトを当てることも、役割だと考えています。

食品ロスの解決は困難?その理由と改善方法は

――食品ロスの解決が難しい理由は、どのような原因が挙げられるのでしょうか。

ここ数年で、食品ロスに関する取り組みを行う企業が増えましたが、廃棄される前の段階でどうにかしなければ、根本的な解決が難しいと思います。 余分に出てしまった食品を無駄にしない、という意識は大事であり、そういったサービスが増えたことも喜ばしいことですが、生産の段階から食品ロスが出ないことを前提に考えなければなりません。

しかし、需要に対する生産を止めることは難しく、企業は売上を出す必要があります。 それに、食品メーカーからすれば、食品ロスは当然出てしまうものです。そんな会社の中で個人が違和感を覚えたとしても、それを口に出すことは難しく、主張できたとしても上の人間に理解されるとは限りません。

 
  ハンバーグ  
    
石神井公園駅にある、ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポの猪のハンバーグ。 害獣として殺されているものの、日本ではまだ需要が追いつかず、食べられていない獣動物が多数存在。ジビエは牛や豚に比べて栄養価が高くヘルシーで環境にも良い為、SRAでも評価が高い。     

また、仕組みやマーケティングの部分でも、食品ロスを生み出す機会はあります。 例えば、3分の1ルールです。これは賞味期限の3分の1が過ぎてしまう前に、メーカーは小売店に食品を納品しなければならない、というルールです。 賞味期限が6ヵ月であれば、2ヵ月以内に納品できなかった場合、すべて廃棄となってしまいます、 他にも、ハロウィン限定の商品が11月になったらすべて捨てられてしまう、商品の表記が1文字でも間違っていたら回収されてしまうなど、安全の基準よりも売り方にこだわってしまうことも、食品ロスを招く原因ではないでしょうか。

食品ロスを始めとする環境に対する配慮は、力を入れなかったとしても支障がない、と優先度が低くみられがちです。 私も昨年の東京オリンピック開催予定の際、選手村で食品ロスを使ったレストランをオープンする企画を、オリンピック委員会に提案したことがありましたが、サスティナブルに配慮する予算や時間は限られることから、後回しにされてしまいました。 このような状況を考えると、根本の意識から変わらなければ、食品ロスの解決は難しいと感じています。 最近の小学校の授業では、目の前にある料理がどこから来ているのか考える、実際に農場に行ってみる、自分で畑を持ってみる、といった環境教育にも力が入れられていますが、子どもだけでなく、大人もちょっとしたことでも体験すれば、意識に変化があると思います。

 
  卵  
    
溜池山王にある、SRA加盟店のレストランKIGI(現在は休業中)。農家さんから朝採れた野菜や卵、加工品を販売する「八百屋」が、なんと店内に。     
 
  黒板  
    
愛媛県にある加盟店のセルバッジオでは、このように食材の生産者の想いやこだわりをお客様に届けている。     

また、サスティナブルな取り組みを楽しめるような環境があれば、意識も変わりやすいと考えています。 実際に、日本サステイナブル・レストラン協会に入会しているレストランで、驚くような変化が見られました。 そのレストランは、元々は特にサスティナブルな取り組みを行っていなかったものの、半年間で沢山の取り組みを定着化させ、従業員の方がそれを説明できるようにまでなりました。 以前までの取引先やフローを変えることは、簡単にクリアできるものではなく、本当に多くの課題と向き合う必要があります。それを短時間で達成しただけでも驚きですが、そのレストランではオーナーの指示で従業員が動いた、というわけではなく、アルバイトや見習の調理師の方まで主体的に学んで、達成を目指したそうです。 そして、こちらの従業員の方々は、サスティナブルな取り組みに向き合うことを楽しんでいました。 だから、数多くある細かな基準を短時間でクリアできたのだと思います。

個人で企業のルールを変えることは難しいことです。それよりは、個人個人が楽しみながらサスティナブルと向き合えるよう、若い世代に発信することが大事かもしれません。 日本サステイナブル・レストラン協会でも、そのような環境が作っていけたら、と思います。

元記事は こちら

profile

冨塚由希乃(とみづか ゆきの)

幼少期から環境問題に意識を持ち、学生時代は環境ビジネス学生団体「em factory」の代表を務める。貧困問題や食糧問題を知ったことがきっかけで、食品ロス問題の啓蒙活動を開始する。インターンを行い、さまざまな食品ロスの問題と向き合った後、日本サステイナブル・レストラン協会に所属。レストランから生まれる食品ロスの改善、サスティナブルな運営を推奨する取り組みを行っている。他にも、花の廃棄問題に対する活動も続けている。

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